『慣用音の不思議』

たけ(tk)GGB03124@nifty.ne.jp談話室

2000-05-20(土):公開。 『訓読みなのに中国語?』 を作成中に思ったことを分離。

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  漢字訓読みで「たあ」〜「たお」となる日本語の単語が、中国語からの借
用ではないか、という案です。

  ここでは「完璧に」借用語、という結論にしていますが、「タ行」に関し
ては「大部分が」借用語であるという可能性の理由はあると考えています。

  というのは、古代日本語の「タ行」と「サ行」とには揺れがあり、元々は
「ツァ行(TS行)」という単一の行ではなかったかとも推定されているか
らです。つまり、元の日本語が「ツァ行」でそれが「タ行」「サ行」に分か
れた。すると、新しい語彙に当てることのできる「音の空き」が出現するこ
とになり、この部分に借用語が入ってきた、と考えられるからです。

  もし、もとの日本語の「ツァ行」の語彙が、基本的には「サ行」に移行し
たとすると、「タ行」の語はほとんどが借用語という可能性が考えられるか
らです。

  *  実際には、借用語が入ってきたために「ツァ行」が分離したと見るべ
    きです。

  タイトルの『慣用音の不思議』というのは、その過程で、「慣用音」が相
当古い中国語の音を残している可能性があるのではないか、と思ったのでつ
けたものです。本文の要旨からは離れたひねくれたタイトルになっています。


漢字訓読みで「たあ」〜「たお」までを集めてみました。たぶん、漢和辞 典で主要な物は網羅していると思います。 【TAΦ*】 た 田 0854 den ◎ たい 鯛 1529 tog ◎ たい 度 0419 dag ◎ 〜したい。 たいら 汀 0708 t'eg ○ たいら 平 0412 biang × ← 汀(t'eg) たえ 妙 0323 miog △ 少:0373:thiog たえ 栲 0646 kog × 考:1040。楮(こうぞ)の白布。←妙。 たえる 耐 1042 n∂g △ 慣用:タイ。寸:0369:ts'u∂n たえる 堪 0279 k'∂m △ 慣用:タン。甚:0850:dhi∂m たえる 勝 0163 thi∂ng ◎ 頑張る、持ちこたえる たえる 絶 0999 dziuat ◎ たおす 倒 0084 tog ◎ たつ 断 0579 duan ◎ * ◎ は中国語からの借用の確信度40%以上。(^^; その中で、原音が「t」「d」であるものには「○」か「◎」、原音が「t」 「d」でないものには「×」か「△」が付いています。 「△」のうち「たえる:耐」と「たえる:堪」に注目してみてください。 両方とも、『慣用音』では「タイ」と「タン」であり、どちらも「タ行」に なっています。 しかも、旁の部分(「寸」「甚」)の上古音は「t」「d」です。 旁の部分の音は紀元前7世紀ころ(詩経の時代)の音を表しているとされ ています。(学研『漢和大字典』p.1594)。したがって、この2例から見る かぎりでは、慣用音は「上古音」よりもっと古い時代の漢字音を残している 可能性があります。 たえる 耐 1042 n∂g △ 慣用:タイ。寸:0369:ts'u∂n たえる 堪 0279 k'∂m △ 慣用:タン。甚:0850:dhi∂m たえ 妙 0323 miog △ 少:0373:thiog さらに、「たえ:妙」を見てみましょう。「妙」には残念ながら慣用音は 残っていません。しかし、旁の「少:0373:thiog」の音は「t」です。 以上の想定で中国語から日本語への借用があった時期の中国語の「原音」 を再構成すると、「△」はめでたく「◎」か「○」に昇格します。 「×」も次のように考えれば、完璧ですね。 たいら 平 0412 biang × ← 汀(t'eg) たえ 栲 0646 kog × ← 妙 ←少(thiog) 。 * 「たへ【栲】・・△タヘ(妙)と同根か」『岩波古語辞典』p.822。
2000-05-21(日): たけ(tk)です。 》 旁の部分の音は紀元前7世紀ころ(詩経の時代)の音を表しているとされ 》ています。(学研『漢和大字典』p.1594)。したがって、この2例から見る 》かぎりでは、慣用音は「上古音」よりもっと古い時代の漢字音を残している 》可能性があります。 》 》 たえる 耐 1042 n∂g △ 慣用:タイ。寸:0369:ts'u∂n 》 たえる 堪 0279 k'∂m △ 慣用:タン。甚:0850:dhi∂m もうちょと調べてみました。 慣用音の子音が、上古音、中古音、呉音、漢音のいずれとも異なる漢字と その要素となっている漢字の上古音。学研漢和大字典 p.800-p.937 で調査。 慣用 部分字 税:0937:thiuad: ゼイ、 兌:0107:duad ◎ 祉:0920:t'i∂g: シ、 止:0684:ti∂g × 碾:0914:nian: テン 展:0384:tian ◎ 研:0908:ngan: ケン、 幵:0023:kuan ◎ 石:0906:dhiak: コク、 ?: ? 瞳:0900:t'ang: ドウ、 童:0954:dung ◎ ※:0896:thiu∂n: ジュン、 旬:0590:giu∂n ◎ ※={目旬} 皿:0884:miang: ベイ、 ?: ? 番:0862:piuan: バン ?: 獰:0826:nang: ドウ 寧:0367:neng × 燗:0804:0806:glan 闌:1409:glan、間: これを見ると、あまり芳しくなさそうです。語源俗解の可能性のあるもの が多い。 「碾:テン」←「展:テン」、 「瞳:ドウ」←「童:ドウ」、 「{目旬}:ジュン」←「旬:ジュン」 「研:ケン」←「幵:ケン」 「石:コク」←「斛:0577:h^uk:ゴク、コク」 はその可能性がモロにありそう。 「税:ゼイ」←「税:セイ(漢)」←「兌:ダイ(呉)、タイ(漢)、ダ(慣)」 「皿:ベイ」←「皿:メイ(漢)」 「番:バン」←「番:ハン(漢)」 「獰:ドウ」←「獰:ノウ(漢)」←「寧:ネイ」 というのは語源族解ではなさそう。でも「税:セイ(漢)」などが濁音化し ただけだったりして・・。 「耐:タイ」←「寸:スン(呉)、ソン(漢)」 「堪:タン」←「甚:ジン(呉)、シン(漢)」 も「耐:たえる」「堪:たえる」からの俗解だったりして・・。(^^; どうも慣用音を理由にするのはまずそうです。失礼しました。 * でも、本論にはほとんど影響しないので、よろしくっ。 * タイトルは変えたほうがいいな・・。(^^;

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